%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88_2016-12-05_4_07_57 1896年に第一回大会が行われた際は参加国が14だった近代オリンピックは、2016年の時点では参加国数は過去最多の205か国、参加人数は1万1000人と言われ、その競技数は28競技にも及びます。


このオリンピックの歴史をたどっていくと、古代ギリシアの時代に遡ることができます。

それでは、当時行われた古代オリンピックと現在行われている近代オリンピックには、一体どのような共通点があるのでしょうか。


この2つの五輪の違いを含め、詳しくご紹介します。

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古代オリンピックと近代オリンピックの共通点について


古代と近代のオリンピックの共通点や違いを知るうえで、あまり知られていない古代ギリシアにおけるオリンピックの特徴に触れていきたいと思います。 

古代オリンピックはギリシアの主神・ゼウスに捧げる祭典として古代ギリシアに生れました。
古代ギリシア人にとって人間の理想とは肉体と精神の調和がとれていることでした。健全で高貴な精神を導き出す教育の基盤としてのスポーツは、古代ギリシア人にとって尊ぶべきものでした。スポーツの祭典としてのオリンピックは、神聖視され、非常に重要なイベントでした。

競技者は裸体が原則で、また、ギリシア人以外の民族(=異教徒)や奴隷、犯罪者には参加資格を与えられませんでした。特にゼウス神が男性だったこともあり、女性も参加資格はなく、見物さえも禁じられていました。古代オリンピックの特徴は、性別・民族・身分によって参加者は厳しく規制されていて、あくまでギリシア人男性のものでした。

※参照:オリンピックの歴史を子供向けにわかりやすく解説!


以上をふまえ、古代オリンピックと近代オリンピックの共通点をみてみましょう。


まず一つ目の共通点は、開催が4年に1度であり、開催月が8月だったということです。
古代ギリシアでは、8月は麦の借り入れが終わり、農村の若者が若干暇になる時期だったという理由から8月に開催されるようになりました。

二つ目の共通点としては、オリンピックはスポーツの順位を競いあう大会ではなく、平和の祭典という点があげられます。古代オリンピックは非常に神聖視され、開催期間中はあらゆる戦争行為を中止し、祭典の成功と無事を祈りました。そして近代オリンピックでも、世界の平和を祈念する理想を掲げられてはいますが、実際では軍事侵攻に抗議したボイコットや、選手村が襲撃されるテロ事件などが起こっています。

これに関連して、時の政治情勢の影響を受けやすい点も共通していると言えます。近代オリンピックは世界大戦や冷戦などによって大会が中止された事は有名ですが、古代オリンピックも時の権力者の影響を受ける事は少なくありませんでした。例えばローマ皇帝で大会に出場したネロは自らの権力を濫用して、自分が負けた種目であっても強引に自分を優勝者扱いさせています。また、古代オリンピックが終焉したのも、キリスト教によってギリシアの宗教への信仰が禁じられたのが原因となります。

また、利権や賄賂と無縁ではない点も共通していると言えます。近代オリンピックの招致活動には収賄活動が行われていると言われる事は少なからずありますが、古代オリンピックでも優勝するために審判を買収する選手は少なからず存在しました。
2020年開催予定の東京オリンピックに関しても、IOC(国際オリンピック委員会)が開催を推し進めようとするのは米国におけるテレビの放映権があると言われています。IOCとしては、仮にオリンピックが無観客で開催される場合であっても、大会の模様がテレビで放送されれば放映権料が支払われるため問題ない、と考えているとされています。

そして最後に、この2つの大会で共通して行われた競技もご紹介します。陸上のほか、やり投げやレスリング、ボクシングは、古代近代ともに行われた種目として知られています。

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古代オリンピックと近代オリンピックの違いについて


次に、古代オリンピックと近代オリンピックの違いについてみてみましょう。

まず一つ目の違いとして、古代オリンピックが単なるスポーツの順位を競い合う競技大会ではなく、神事、宗教行事という意味が多く含まれていたという点が挙げられます。古代オリンピックの起源は、蔓延した伝染病を封じるために神に伺いを立てたところ、争いをやめ、競技会を復活させよ、という神の啓示に従って開催されたのが始まりと言われています。開催地域も現代のように世界各地を巡回するのではなく、オリンピュアに限られました。

二つ目の違いとして、古代オリンピア競技はギリシア人の血を引く男性だけに参加資格が与えられていた点が挙げられます。あくまでギリシア国内に限られた、しかもギリシア人の血筋を持つ男性にだけ許されたスポーツの祭典だったのです。ちなみに近代オリンピックも第1回大会の参加資格は男子のみで、2回目から女子の種目ができました。

三つめは、開催種目についてです。古代の種目は、陸上競技、ボクシングとレスリング、さらにパンクラチオンと呼ばれる総合格闘技のような格闘技もありました。戦車(戦争用の馬車)競走や五種競技も行われていました。古代の五種競技をアレンジして近代オリンピックでも始められたのが、近代五種と言われる種目です。近代五種は、フェンシング、射撃、クロスカントリーランニング、水泳、馬術を組み合わせたものです。
また、マラソンについても近代オリンピックから始められた競技のひとつです。古代オリンピックにも様々な距離の競走競技がありましたが、現在のような42.195キロのように長距離の競走はありませんでした。

四つ目は、古代オリンピックでは、優勝者に与えられたのは月桂冠(月桂樹の枝で編んだ冠)と名誉だったことです。近代オリンピックから初めてメダルが与えられるようになりました。
しかし近代オリンピックについても、当初は優勝者と準優勝者にだけ、銀と銅のメダルを授与していましたが、後に金メダルができ、優勝者から三位までの入賞者に対して、金銀銅のメダルを授与するようになりました。

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この記事のまとめ


古代オリンピックと近代オリンピックの共通点と違いについてご紹介しました。


・共通点
開催が4年に1度、8月に行われている
「平和の祭典」という理念が掲げられている
時の政治情勢の影響を少なからず受けている
利権や賄賂は共に存在していた
陸上、やり投げなど、共通して行われた種目も存在

・違い
古代オリンピックは神事、宗教行事の意味合いが強かった
古代オリンピックに参加が許されていたのはギリシア人男性のみ
開催種目の多くが異なっている
古代オリンピックの優勝者に与えられたのはメダルではなく月桂冠


まとめると、こうした点があると言えます。

古代・近代両方のオリンピックの共通点として「平和」というのが重要な要素となっていますが、2016年のリオオリンピック参加者の中には、政治的な理由から難民選手団というチームが結成されています。

古代ギリシア人が理想に掲げた「健全で高貴な精神を導き出す教育の基盤にスポーツがある」とする理念を、世界中の国々がもう一度再確認し、世界中から戦争を無くし、世界のどこに住んでいても誰もが平等に参加できる平和を享受できるスポーツの祭典として未来につながるオリンピック大会であってほしいですね。