実は、幕末の大老・井伊直弼の先祖であり、2017年大河ドラマ「おんな城主直虎」の主人公である井伊直虎の婚約者でもあった人物です。
そんな井伊直親とは一体どんな人だったのでしょうか。
今回は井伊直親の人物像についてスポットを当てるとともに、その妻の情報や、直親が今川氏真に討たれた理由についても解説します!
井伊直親ってどんな人?わかりやすく解説!
まずは井伊直親がどんな人だったのかを、簡単にご紹介します。
井伊直親は1535年に、遠江国の井伊谷(現在の静岡県浜松市)という場所で、井伊家当主・井伊直平の三男である井伊直満の子として生まれました。1542年に直平の嫡男である井伊直宗が没し、その後井伊家を継いだ直平の嫡男・井伊直盛には男子がいなかったため、直親は直盛の娘である次郎法師(後の井伊直虎)と婚約し、直盛の養子となっています。
ややこしいので、もう一度まとめると…
・井伊直親の父親は直満
・直満の父親(=直親の祖父)は井伊直平
・井伊直親の婚約者、井伊直虎は直平の嫡男、井伊直盛の娘
・つまり、井伊直親と井伊直虎はまたいとこの関係
といった事になるでしょうか。
話を直親に戻しましょう。1544年には、実父である直満が今川義元から謀反の疑いをかけられて切腹し、直親は身を守るために信濃(現在の長野県)に亡命しています。1555年には井伊谷へと戻ることが出来たものの、1560年に起こった桶狭間の戦いで井伊直盛が戦死すると、その後を継ぎ、直親は井伊家の家督を相続します。
ところが、当時の井伊家は一枚岩という状況ではありませんでした。なんと、直親が家督を相続したことに対して不満を持つ家臣・小野道好が、井伊家の主家である今川氏真に有る事無い事吹き込んだのです。直親は弁明するために氏真のもとに向かいますが、その道中で氏真の家臣である朝比奈泰朝に襲撃され、28歳の若さで討死しました。
井伊直親は戦国の動乱期を、まさに命をかけて生き抜いた男と言えそうですね。
直親の妻は井伊直虎ではない!ならどんな女性だったの?
井伊直親と言えば、井伊直虎の婚約者としてその名が知られています。これは井伊家の当主である直盛に男子がいなかったため、直親を婿養子にするために取られた措置でした。
しかしこの2人は、実際に結婚する事はありませんでした。
では、直親の実の妻はどのような女性だったのでしょうか。
実は、直親は信濃へ亡命中、奥山親朝の娘・ひよ(友椿尼)を正室に迎えています。奥山親朝は井伊家の古くからの分家であり、したがってひよは直親にとって親戚筋に当たります。直親とひよの間には、1561年に井伊虎松(後の井伊直政)が誕生しています。
直親の死後、ひよは我が子虎松を徳川家に仕官させるために、家康の親戚にあたる松下清景と再婚しています。このかいもあって、虎松は1575年に家康の小姓として仕官。その7年後には元服して井伊直政と名乗り、徳川家家臣団の筆頭になるほど活躍。次々と手柄を立てる息子の姿に、母親として感極まるものは計り知れなかった事でしょう。
ちなみに、直親と婚約を交わしていた直虎は、生涯未婚を貫きました。婚約者がいながら親戚の娘と結婚をした直親を薄情な男のようにも一瞬感じましたが、よくよく考えれば、井伊家存続という意味に置き換えて考えると、正妻を迎えて子孫を残した直親の行動はやむを得なかったものだったのでしょう。
※参照:井伊直政ってどんな人?年表や徳川家康との関係を紹介!
井伊直親が今川氏真に討たれた背景とは?
再度、話を井伊直親に戻しますが、彼が今川氏真に討たれたのは何故だったのでしょうか。
その理由は、井伊家の家臣、小野道好(小野政次とも)にありました。2017年の大河ドラマ「おんな城主直虎」では俳優の高橋一生さんが演じる事になっているこの人物は、井伊家の家臣でありながら、直親が井伊家の当主になる事を快く思っていなかったとされています。道好は今川氏真に対して、「直親が元康と結託して謀反を起こす疑いがある」という嘘を伝えます。このため、今川氏真は家臣の朝比奈泰朝に命じて、直親を討伐させたのです。
そしてその背景には、当時の三河〜遠江国の動乱が大きく関係しています。今川義元が桶狭間の戦いで討たれた後、今川家の家督は今川氏真が相続しました。ですが、義元を失った今川家は衰退傾向にあり、今川家に人質として差し出されていた松平元康(後の徳川家康)は、義元を討った織田信長に近づき、今川家から独立する道を模索します。
こうした状態の中、氏真の心中は穏やかではなかったのでしょう。そのためか、氏真は小野道好の讒言を信じてしまいました。直親が氏真に討ち取られた背景には、桶狭間の戦いという大きな出来事と、下克上の風潮が大きく関係していると言えるでしょう。
この記事のまとめ
井伊直親がどんな人だったのかをご紹介しました。
井伊直親は三男の息子に生まれながら、井伊家を相続するために次郎法師(井伊直虎)と婚約をします。実父が讒言により自刃に追い込まれると、直親は亡命をします。その最中、正妻・ひのを迎え、彼女との間に井伊直政をもうけました。
養父の戦死を受け井伊家当主になった後、家臣である小野道好の讒言により、今川氏真に討ち取られました。井伊直親とは、戦の世の中を文字通り命からがら生き抜き、井伊家の家名を守った人物と言えるでしょう。
なお、以下の記事では直親を討った今川氏真の人物像について解説しているので、興味があれば一度ご覧になってみて下さいね。
※参照:今川氏真の再評価の余地は?有能だった分野について!